4逃亡成功。逃げきりました。(朝月)


大人しく徒競走で良かったものが、
誰が考えたのかは知らないが(たぶん工藤だが)
2年生の競技は『障害物競争』に変わった。
しかも障害物はロボット、ときた。
わざわざ体育祭に来てやったのに……。
僕の番は前から10列目。逃げる時間は、ある。


「すいません。トイレ行って来て良いですか?」
「良いよ、すぐ戻ってきてね。」
笑顔で答える上級生。うん、なかなかに良い笑顔。
明日から見習おうかな。

「ダーンッ!」
1列目のスタート。あそこにはエイリアンがいるはずだ……
発見。銀髪だからすぐ分かる。

…意外と足が速かった。
あわや1位!?と、その時。
1つのロボットがなんか

壊れた。解体した。てか頭が外れた。



「我が愛しの妹よー!」
「にょーーーー!!」
なんかいた。抱きついた。叫んだ。

「何でお前なんかが此処にいるのだ、帰れなのだーーーっ!」
「何言ってるんだやなぎ。お兄ちゃんお前の活躍を見に……グハッ。」
「帰れなのだーーーー!!」

柊の兄こと柊松乃はどこか遠い処へ飛んで行きましたとさ。
さてゆっくりしているのもこの辺で。
そろそろ本格的に逃げるとしよう。

第一関門は1年生テントだ。
水林か………ああ。いなければいいのに。

幸い、水林はいなかった。いなかったが。

「王子様ぁ〜、何処ですか〜?はぅぅ〜…」
水林は2年生の処に居た。
出来る限りの全速力で離れた。

校舎に入る。
普通に歩く。
準備室に寄って、ダンボールとガムテープと紙袋を少々失敬する。
紙袋に入れると、先生のパシリみたいな格好になった。
良し、OKだ。

生徒会の人や先生とすれ違っても、何も言われない。成功だ。
そのまま屋上へ行く。
放送室の前で生徒や先生がオロオロしていた。
ああ、工藤か。御気の毒様。
屋上に着いた。
ドアにまずダンボールをくっつける。さらにガムテープを貼り、バリケードにする。
これで一安心だ。

日陰に座る。
点数板は下にあるから、よっぽどの物好き以外誰も来る心配は無い。
何も心配はない。・・・たぶん。


放送が聞こえる。


「63番朝月さ〜ん。居ませんか〜。」
居ませーん。


わぁ、下で先生やら生徒、とにかく豆粒のような人がオロオロしてる。
楽しいなぁ。


やがて諦めてくれたのか、競争が始まった。
それじゃあ暇だし、屋上にストックしていた本でも読むか。



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