7女王か王子様か(朝月)


ここは城の前庭。
トランプの家来達が、一生懸命薔薇を赤色で塗っていました。
何しろ女王様は赤色がお好きなのに、
家来達は白色の薔薇を植えてしまったのです。


「急げ、女王様が来るぞ!」
慌てふためく家来達。
さあ、そこに女王様がやって来ました。

「ん?何をしているのかな、君達?」
女王様は辺りを見回し、ふと白色の薔薇が一輪だけ咲いていることに気が付きました。
家来達は途端に「しまった!」という顔をします。
そして、泣きそうな顔で女王様に懇願し始めました。

「す、すみません、どうぞ御加護のほどを!!」
女王様はにっこりと微笑みます。
「良いでしょう。これから気を付けて下さいね。」
「えっ本当ですか!有難う御座……」
「嘘。…家来共。」
女王様はパンパンと手を叩きます。
さっと、何人かの家来が女王様の周りに集まりました。
「この者達を処刑しなさい。」
「え!?」
目を見開く家来達。
女王様は眠たそうな声で言います。
「処刑だよ…。では城まで。」
「御加護をーー!」
ずるずると他の家来に引きずられていく家来達の叫びも虚しく、馬車は無常にも通り過ぎて行きました。

柱の後ろから、さっきの周が顔を覗かせて溜息をつきます。
「今日も女王様、突っ込みが鋭いですわ。」
今のは果たしてツッコミと呼んで良いのかというツッコミは無しです。


馬車が通り過ぎたすぐ後、アリス御一行様がやって来ました。
「はぅぅ……王子様はどこなのでしょう……」
「違う、あれは女王様だ。」
「柏原、朝月じゃないのだ?」
「馬鹿、あれは女王様だって言ってんだろ。そして俺はチェシャ猫だし、あれはアリスだし、お前は白ウサギなんだ。」
「……何となく分かったにょ。」


アリス御一行がのんびり話をしながら歩いていると、突然家来が一人駆けてきました。
「曲者だ!何をしているお前達、この者たちを早くひっ捕らえい!」
「は、はぅぅ!違うのです!王…女王様に会いに来たのです!そうなのです、女王様はどこなのですか?」
「ああ、今通ったよ」
優しそうに答えるトランプ、実はこやつも女王様の家来なのですが、動く気配が全くありません。
命令した人が嫌われているのでしょうか。


何はともあれ、女王様の居場所が分かったアリス一行は手を取り合って喜びます。
「にょー!本当なのだ!行くにょ!」
走り出したアリス一行を慌てて追い駆けるさっきの家来(叫んだ方)。
「おいこら待て、お前ら怪しすぎる。取り敢えずそこの変なコスプレ男は残れ。」
“プチッ”
あ、今何かが切れた音がしました。
「俺はチェシャ猫だ!コスプレ男などでは断じて無い!」
チェシャ猫は家来を皆やっつけてしまいました。
わー強い。白ウサギは喜びます。アリスは何故か残念そうな顔をしました。


アリス一行は途中で、周を見つけました。
「にょー、さっきの帽子屋だにょ、どーしてここに居るんだにょ?」
「……。さっき云ったじゃないですか。帽子の注文を取りに来たんですよ。」
「あ、帽子屋も一緒に来るか?女王様に会いにいくんだが、」
周の目が光った気がした。(後日談:チェ○ャ猫より)
「はい、行きます!」


三人が四人に増えました。



コンコン。
「女王様、失礼致しますので御座いますですよ!」
アリスは入った瞬間、
「王子様――!」
と叫んで女王様に飛びつきました。
女王様はすかさず、
“金のハリセン”ではたきました。無駄に成金趣味です。
「はぅぅ……痛いのです王子様……」
「一つ言おう、私は女王だ。王子様ではない。断じてない。」


ネコが手を挙げました。
「女王、質問。どうしてハリセンを持ってるんだ?」
「それはだな、誰かが匿名でハリセンを送ってきたからだ。重宝している。」
周が何故か赤くなりました。


「ところでだ、何故こんな所に民間人がいる。」
「柏…ネコと我輩は女王のお茶会に呼ばれたのだにょ。」
「私は帽子の注文を受けに参りました。」
「はぅぅ、”ですてぃにー”なのです!!」
「そうか、では」
「「「「では?」」」」
「家来を呼ぼう。おーい、こいつらを捕らえろ」


逃げる間もなくアリス達(周は除く)は捕まってしまいました。
「何故俺とウサギまで……お茶会に呼ばれたんだが」
「今日のお茶会はもう実施し終わったが」
チェシャ猫は横目で白ウサギを睨みます。
白ウサギはすっとぼけて口笛を吹いています。が、吹けていません。
帽子屋がおずおずと女王様にお伺いを立てました。
「女王様、私はどうすれ……?」
「あぁ、君は先に他の人の注文を受けておいてくれ、私は後でいい。」


周は礼だけして帰ってしまいました。


「お願いしますなのだにょーー!!話だけでも聞くのだにょ!」
「はぅぅ、お願いなのです!」
「聞かないのならば叫ぶにょー!!みー!!みみょーー!!!」
「分かった。」
「本当か!?」
「あぁ。お前等が本当に煩いってことがな。家来共、この者達の首を刎ねよ!今すぐに!」
女王様は黒い怒気(オーラ)を背中に背負って言いました。

「お願いしますなのだ!話を聞いて下さいなのだーーー!!!」
「話は明日の裁判で話せ。それまでこ奴らは牢に放り込んでおけ。」
「御意。」
アリス達3人はずるずると牢まで引きずられていきました。


アリス達がいなくなるのを見て、女王様はほっと溜め息をつきます。
「やっと煩い奴等がいなくなった。」
女王様は一口だけ紅茶を飲み、優雅に本を読み始めました。




*女王様は帽子を2個お買いになりましたとさ。   byいかれ帽子屋


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