2スプーンダンス(朝月)
そろそろ「文化祭=劇」という良く分からない方程式ができそうな頃、
僕は、水林に捕縄そして拉致され空き教室にいた。
水林は少女マンガのようにやけに煌々した目をして僕を見つめる。
「……あのー…そろそろ居心地が悪いんだけど。」
「王子様っ!」
「私だけの王子様になって下さい!」
「……はあ!?」
もちろん、お断りなのだが。(というか今更(ry)
「何が。どうして。取り敢えず説明だけでもしてもらえるかい。」
「じゃあ取り敢えず約束だけしてもらえますか?」
「取り敢えず聞かせてもらおうか。」
「取り敢えず約束して下さいです。」
双方、一歩たりとも引かない。
……引いた方が負け。
……。……。見つめあってどうするんですか。
切り札、発動!
「水林、帰るよ。」
「……はうっ!?それはダメですっ駄目々々なのです!」
「説明しないのなら帰るよ。」
「…………。」
はぅーー、としぶる様子を見せてから水林はしぶしぶ話し始めた。
「実はですね、………文化祭の後夜祭に
ダンスパーティー
があるのです。」
「……え?」
僕の思考は急停止する。
え、ダンスパ−ティーってあれだよな、あの大会場でステップ踏むやつだよな、え、盆踊り?……キャンプファイヤー囲んでフォークダンス、え、スプーンダンス?火を囲んで踊るんじゃないのか?悪魔呼び出す、……訳ではなくて、
「ダ ン ス パ ー テ ィ ー ?」
「そうなのですぅ!」
目を輝かせて迫る水林。
ずずずと後退る僕(with椅子)。
「……水林、1つだけ言いたい。」
「何ですか?」
「僕、踊れないからね。盆踊り(町内会限定)以外。」
さすがに驚いたらしく水林が固まった。
……そんな庶民が踊れるわけないじゃないか、習うかそんなもの。
うーうー悩み込んでいた水林を横目に逃げようとすると、水林が肩をがしっと掴んで来た。
「…暴力反対だな。」
「王子様。それなら
私がお教えします。」
「断る。」
「いえ、教えます。」
にこにこと微笑みながらぐぐぐぐぐ、と手に力を入れるSさん(双方の意味で)
「……痛いんだけど。」
「私に習うのでしたら今すぐ話しますよ、王子様。」
何やら水林からは工藤&生徒副会長と同じオーラが立ち昇ってるんですがうわぁ怖い。
「………な、習います」
「はぅ、有難う御座いますです王子様っ!」
女(子)は怖い。