6お説教タイム〜人種差別はいけません!!〜(朝月)


隠し子疑惑が起こる数分前の会話。


「峰兄…あれ、あの人、何者ですか。」
「ああ、あれ…何かだよ。」
「エイリンなのだにょーーっ!」
「…な、何か痛い人にしか見えないんですけど…」
「……。で、あれが柏原だよ。通称ポテチ。」
「…はあ。で、さっきの異星人さ…」
「それからあれが工藤だな。」
「はぁ。…その、異星じ…」
「だから異せ…」

「うん?」

(←笑顔)
「…い、いえ何でもないです」


そんなほのぼの会話を僕と繰り広げていた従兄弟殿はいま、僕の後ろでぶるぶる震えている。
水林もなぜか背後にいる。
…水林(お前)は、出てこい。


それにしても何かパワー、みたいなものが使えるとは流石エイリアン兄。
まるでラノベいやいや、異星人なのだからまあ、…うん。
羨ましい。僕も欲しい。テレポーテーション能力が欲しい。後、瞬間記憶能力。
呑気に何が欲しいか考える。


ふと後ろを振り向くと、従兄弟殿は泣きべそをかいていた。
こういう所はまだ小学4年生だ。
…まあ、凄い殺気だったもんな。後は赤い目か。


ポンポン、と従兄弟の頭を軽く叩く。
従兄弟殿はボソッと「化け物」と呟いた。
その声が果たしてエイリアン兄に届いたかどうかは分からない。
エイリアン兄は顔色一つ変えなかったから。


だけど。


「あー…えーっと……従兄弟殿がトイレ行きたいって言ってるんでトイレに連れて行ってくるから。」
「…んえ!?僕そんなこと言ってないよ!?ちょっえっあの、……」
「失礼――。」
暴れる従兄弟をずるずる引きずって、僕は図書室から出る。
バタン。
ドアが閉まったのを確認してから、従兄弟を見据える。


そして、
「…馬鹿かお前。」p 従兄弟は顔色を変えた。
「……だ、だって峰兄は思わなかったんですか!?目を真っ赤にして、髪の色変えて、一瞬ですよ!?
誰がどう見ても化け物じゃないですか「五月蝿い」


面白い様にすっと黙り込む従兄弟。


「別に思っても良いけどさ、僕が言ってるのはそういうことじゃないし。口に出してどうする。
今お前がやったことはさ、孤立した山荘か何かで殺人が起きて、その時に“犯人はこの中にいる!”って叫んだようなもんだよ。」
「それはしばしば探偵のような気が…」
「…それは置いておこう。赤い目だからって何だよ。白兎は赤目だ。『例のあの人』だって赤じゃないか。」
「……それは悪い例なのでは。」
「……。つまり、あれだ。お前のやったことは…あー…そうだ、人種差別と一緒だ!」
「説得力無いですねー峰兄。」


何で僕は説教相手にあきられているのだろう。


「だからな、心で思ったことは口に出すな。悪いことは特に。心で思ったことをそのまま口に出すやつはガキ以下だぞ。分かりますか?」
「分かりますっ!幼稚園生に話かけるように話しかけないで下さいっ!」


拗ねた顔をして僕を睨みつける従兄弟殿。おお、回復した。


「じゃあ取り敢えずそこに立っとけ、5分程」
「え、何でですか?」
「…いや、反省しろよ。……そうだな、29×29まで唱えたら入っていいよ。」
「19×19ですら無いんですか!?」


従兄弟殿はブツブツ呟きながら仕方なく九九を唱え始めた。
………素直っていいな。
今度生まれる時は素直な子に生んでもらおう。


九九を唱える(現6×3)従兄弟殿を横目に、僕は図書室に帰る。
いないことを聞かれたら、…そうだな、“トイレに流れた”とでも言っておくか。



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