3影賀家仲直り大作戦 Part1(光矢)


〜こちら場所は変わって高等部インセタリウム(ミニ植物園)〜


「あー、薄。いらっしゃい。ここすごいでしょー。初音に頼んだんだよ。」
「ほっ、…ほんとにね。」


なっ、なんなんだ。
ただ今、僕は2年間会ってもいなかった兄に呼び出され中。
っていうかなに?
インセタリウムって頼めばできるんですか?


「ってか何の用………何してるの。」
「鯉にえさあげてるんだ。
 あ、こっちからね『なまず』に『タイっち』に『うなギー』だよ。」

満面の笑みで僕の方を見る兄。
……ネーミングセンスひどくないか。
だって鯉に普通そんな名前付けないだろっ。


「?」


今っ首っ、首をかしげたぞ。
そうか、変なコメントなんてしてみろ。ハツのような嫌がらせをしてくるんじゃ。
けっ、けど沈黙が。
痛いって、痛いって。


「ねぇ、薄

「失礼しましたーーーーーーーーーー」


結局僕のとった行動→逃げる。


「うなギー。また僕、薄と仲直りできなかったんだけど……。」
「…………………。」
「そっか、君、しゃべれないんだね。ハァー。」


僕が中学校1年生ぐらいのころからなんだか弟は僕をさける。
「黒いっ」とか言って。
そんなつもりはないのに。


「また仲直りできなかったのですか?」
気がつけば後ろに周ちゃんが。


「あっ、師匠。」
「師匠は恥ずかしいのでよしてくださいと何度も言いました。
 それに鯉にじーっと話しかけるのは他の人が引くのでやめてとも言ったはずです。」


薄との仲直り大作戦に協力してくれる周ちゃんを僕は師匠と呼んでいる。
周ちゃんは僕よりも常識あるし、お嬢さんほど騒がしくしないし、いい理解者なのだ。


「で、今回の敗因は?」
「……切り出す前に逃げられた。」
眉間にシワがよった周ちゃん。ちょっと恐い。


「何か『黒いっ』と思われることは言っていませんか?」
「いないよ。だいたいさ、黒魔術うんぬんは母さんからの口癖がうつっただけだし僕使えないよ。
 紅茶に関しては僕、卒業式でキレたけど、あれは僕の大好物アップルティーだったからだし、それだけでしょ。」
「……。自覚がないって恐ろしいですねぇ。」
「ねぇ、どうにかできない師匠。」
「くどいっ。まあ、努力あるのみでしょうねぇ。」


どちらともなくでるため息。
はぁ、僕の弟との和解はいつなのだろう。
――――――――――眠い。


「……きて………お………て……」
ん……なんかの声が。
「起きて下さい、光矢さんっ。」


まぶたが開くのに時間はかかったけれど、開ければそこに、
「ハツか。」
「探していたんですよ。ずっと。さっ、帰りましょう。」


確かに外は暗く、夕方はとっくにすぎている。
こんな時間まで僕を探してくれるハツはいるけれど、それでも薄と仲良くしたいって欲張りなんでしょうか。


「と思うわけなんです、師匠。」
「何度も言うな。ってかなんなんですか、そのノロケ。別に誰もそんなもの求めてません。」
「や、けど実際思ったんだし………」
「そんなことより、まずはイアンです。ほら、薄への気持ちを口にだしてっ」
「薄……薄……薄……薄。」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。お願いだから呪わないで。」


目の前をすごいスピードで弟が逃げていきました。
まだ仲良しにはなれません。
はぁーーーー。ねむっ。



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