2屋上の扉は閉ざされたまま……(朝月)


(屋上の)扉は閉ざされたまま(by石持浅海)―屋上、現在。


重い鉄製のドアを開ける。
ギイィィとまるで何かの動物の断末魔のような音がした。
……不吉だ。


此処は阿賀紗学院6階の上に平がるフリースペース。つまり、屋上だ。


もう誰からも存在を忘れられているらしく、誰も来たためしがない。
この穴場を見つけたのは中一の初めのころ。
昼寝や読書が静かに出来る場所を探していると、偶然此処の扉の前に辿りついた。
まあそれまでにも色々面白いもの(後から生徒会の負の遺産だったことが発覚した。一般人にとっては大迷惑だ)
、を発見していたが、この屋上はその面白いものや場所たちに匹敵した。

日は当たるし、影はあるし。
雨が降っても隅には倉庫みたいなプレハブがある。
プレハブの中には電灯もあるので、暗くても本が読める。
前は誰か来るのかと思いプレハブには近づかなかったが、今では堂々と本(私物)が置いてある。
…既に屋上は僕のテリトリーみたいになっている気が。
いや、屋上というか学校は皆のものだけど、誰も来ないだけ。

そう、誰も来ない。

いくら外から「おい、鍵を開けろ!」という声が聞こえたって、
「お〜い、誰だぁ?」なんて声が聞こえてきたって、
「はぅぅ?開いていないのですかぁ?」なんて声が聞こえてきたって、
「にょ!ここは何処なのだ!!」なんて声が聞こえてきたって、

誰も来(れ)ない。


この静寂を破られてたまるか。
「咳をしても一人」正岡子規、何の文句がある?
素晴らしいじゃないか。

まあ、屋上では、
音楽を聞いても良いし、
本を読んでも良いし、
寝っ転がって瞑想するのも良い。
もちろん1人で「神経衰弱」をしても良い。
………最後のは流石にしないけど。
ああ、何か「神経衰弱」って漢字で書くと空恐ろしい。
何でこんな名前にしたのだろう。
ネーミングセンスを疑う。
今度から平仮名で書こう。「すいじゃく」は。

そういう事を考えている内に、掃除開始のチャイムがなる。
僕は本を携えて立ち上がる。
施錠をして僕は下に降りた。

階段を降りると、クラスメイトの1人が話しかけてくる。
「あ、朝月だ。毎日何処行ってるんだ?」
「……あー、ちょっと上にワープホールがあってね、そこから僕は何処か遠い処に行ってるんだ。」
「……(引いた目)」
「…いや、嘘だから。」
「教えたくないんだな、分かるよその気持ち。」
別のクラスメイトが肩を叩いてしみじみと言った。
何の話だ、何の。



場所にまつわる話って、これで良いんですか、作者?
とにかく僕はもう語る気は無いので、これでお暇します。
ああ、今まで話したことはフィクションかもしれないので気を付けて下さい。
(当社比20%増)
それでは。



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