3神よ、我に試練を……与えないで(朝月)




修学旅行に中2は来ない。

中2(つまり水林)は来ない。

「………。」
何という歓びだろう!水林が修学旅行に来ないなんて!
僕は神から与えられた幸せを噛み締める。
他の人が橘某が如何だとか美術教師が云々だとか言っているがそんなことは僕には関係無い。

『水林が来ない』たったそれだけのことで僕はこんなに幸せになれる!
今なら僕は人類(注:水林は除く)全てを愛せそ…あ、姉さんは無理だ。

そんなこんなでテンションが高い(しかしはた目から見ても分からない)まま帰宅すると、

姉さんと冂が仁王立ちして立っていた。
「…は?」
「ずるいですよっ!峰兄だけ旅行に行くなんてっ!」
「そうよずるい!私も行くんだから!」
………20才と10才の駄々っ子がいる。
「いや…修学旅行だし…というか冂も今から3回あるだろ。」
「そういう問題じゃないんです!」

「峰兄如きが一人だけ良い思いをするのが許せないんです!」
「如き!?」
……言うにも事欠いてまさか年上の従兄に如きと言うのか僕の従弟は。
しかも何だか知らないけど姉さんうなずいてるし。肉親なんだし少しはフォローするべ(以下略)
姉さんはやや茫然とした僕を見て嬉しそうに言った。

「まあ私はついて行くけど。」
…え?
マタコノ姉ハ何カ変ナ事ヲ言イ出シタナア怪訝シイナ僕の脳が理解しきれてないんだけど。
「ふえ?…え、ええ!?き、きき聴いてませんよそんな話っ!?」
冂もパニックを起こして姉さんの顔を驚愕の表情で見つめる。

「えーだって京都か東京なんでしょー?どっちもおいしいじゃない。」
御飯がか。御飯がだよな。

「勿論ネタ的によ」
……。
「それからイアン君?も見てみたいしー」
嬉しそうに一つ一つ指を折り始める姉さん。

……神よ、これは我に与え給うた試練なのでしょうか。


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