1かしわばら が たおれた(朝月)
そしてまた、図書部定位置(図書室)。
先日の騒ぎの原因である従兄弟・白い人・行灯さんは静かに本を読んでいる。
工藤さんも本棚にはたきをかけている。
柏原はポテチ大図鑑を探しに行き、
S先生は奥に引きこもって
静かだ。……と、思ったのに。
何でだろう、隣から変な声がするなぁ。
「ポテチは私のものなのですーーーっ!」
「にょっ!?違うのだ、我輩なのだーーーっ!」
見たくない。
見たくないけど。
隣を見ると、……エイリアンと水林がポテチの袋の取り合いをしていた。
……うわ、どうでもいい。
「だーかーらーっ、私のポテチなのですぅーーーーっ!!」
「何を言うのだにょっ!?我輩のだにょ、話すのだにょーーーっ!!」
そのポテチは柏原のだよな?
君らのじゃないよな?
現実から目をそらして本に戻ったその瞬間。
ビリイィィィッ(not ビリー)
袋の破れた音が響いた。
大量のポテチが放物線を描きながら華麗に宙を舞う。
ポテチの黄金色が光を反射し煌々と瞬く。
固まった水林とエイリアン。
ポカンと口を開けてポテチを見る従兄弟殿と白い人。
はたきをかける手を止めて静かに見守る工藤さん。
その物事全てを無視して本を読む行灯さん。
時間が、止まった。
そして。
ポテチが雨あられの図書室に(水林とエイリアンの頭上に)降り注いだ。
呆然とする図書組。
唖然とするその他。
シーンと静まり返った図書室に、突如場違いな鼻歌が響いた。
鼻歌は本棚の奥からだんだん近づいてきて、
柏原がポテチ図鑑を手に携え、ひょいと本棚から顔を出した。
「「「「「あ。」」」」」
総勢5人が見計らったように同じ言葉を発する。
柏原の目が驚いた様に図書室の内部を彷徨う。
ふと、床に落ちているポテチに目をとめた。
点々とポテチをたどっていく柏原の視線。
やがてその視線は破れたポテチ袋(中身は空)に行き着いた。
ポテチ図鑑が床に落ちる。
柏原の顔色が面白いようにサァ……っと青ざめた。
何か言いたげに口を開く柏原。
口をパクパクさせ、フラっと揺れると、……そのまま倒れた。
それを見た時僕の脳内では
“かしわばら が たおれた”のテロップと共に電子音が流れたのだけどそれは良いとして。
再びシーンと静まり返った図書室。
……何故誰も動こうとしない。
水林とエイリアンを見ると素知らぬ顔して雑誌を読んでいる。
………。
いや、片づけろよ。
……巻き込まれたくないんだけどなぁ。
……S先生に見つかる前に帰ろうかな……。