1召喚しました『れっつ☆えくささいず』(水林)


「そしてですねぇ!王子様が輝いていたのですよぅ!桜の花びらの中に麗しい王子様が……もぅ、すっごく楽しかったのですぅ!!」
「へぇ…で、君はさぁ。」
「はぅぅ?」
「ボクに『図書組』とやらの話をするけど、『王子様』というキーワードしかいってないんだけど。」
「あれれ?ユキトーに言ってませんでしたっけ?」
「うん。ボクにはそれが『実に奇妙な集団』としか聞こえない。」


この私と話しているのは行灯撫子(ゆきとう なでしこ)。
女の子なんですが、男性からみたら女性、女性からみたら男性にみえる、実に不思議な方です。
制服がなかったら、私もまちがえるかもしれません。


初対面で、「ユキトーと呼べ」といわれました。
ハテナマークを浮かべると、眠たげな眼が少し笑いました。


「だって、『撫子』っていう名前はいかにも女だし、よくあるだろう?
そのうえ、『行灯』は『あんどん』と呼ばれるかもしれないけど、『ゆきとう』は読める奴もそうそういない。
だからさ。」


だからユキトーって呼んでくれ、ってやけに分厚い本に目を戻しました。
そんな人です。
ちなみにユキトーは、学年2番です。


「ユキトー、貴方はいつも本を読んでいるのに、どうして貸出冊数があまりいってないのですかぁ?」
「いつも同じ本だから。」
ある日、ユキトーにきいて、そう答えられました。


『黒魔術図鑑』


…はぅぅ。


「これはねぇ、ボクは多分1年位読むのにかかるだろうなぁ……」
そういいながら、珍しく嬉しそうに笑うユキトー。


………つっこめないのですぅ。


「で?」
「へ?」
「図書組って何?」
「あぁ……えーとっ、本が好きな人の集まりです!
王子様とか、柊先パイとか、くそノッポ先パイとか、周先パイとか……」
「周!?」
「へ!?」
「……工藤……周様も…そこにいらっしゃるの?」
「(様!?)え、えぇ……」
「この『黒魔術図鑑』を3日で読み終わったあの工藤周様が…!
 そして工藤周様のいとこの、これをたった1日で読み終わった初音様とも接する機会が…!!」
「……あの、ユキトー……?」
「…あぁ、すまない、取り乱した。」


フー、と背もたれに体重を預け、コキ、コキと首をならしていました。
「僕は初音様と接する機会増えるかと思って、生徒会に入ったのに、仕事はこないし、中等部生徒会長あんなだし。」


んー、図書組いいなー、けどこれ読み終わってないしなー、とかいいながら、
ユキトーはうー、とかいって悩んでます。


で。


「ユキトー、あのぅ、ずっと思ってたのですが……」
「何?」
「後ろの……それは…何ですか?」
「昨日召喚した。」
「何してるんですか!!!」
「名前はボブで。」
「名前あるのですか、その後ろのムキムキ!!」
『コーンニーチワー☆』
「とか見せかけて実はビリー」
「ビリー!?!?」
『れっつ☆えくささいず』
「私はユキトーのキャラがわからなくなるですよーーーーー!!」
『ヴぃくとりー』


……ユキトーは、ボケである私をツッコミにさせるすごい人です……



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