8ボケ選手権決勝戦(朝月)
人間とは面白いものだ。
ツッコミを愛してやまない(らしい)少女も居れば、ポテチのために走り出す少年も居る。
エイリアンは……いや、人間じゃないか、そもそも。
時に面白いのはあの水林とかいう少女だ。
学校にアボカドが落ちているのを不思議に思わず、何故かパペットと僕を間違える。
でも、一番気になるのは、
何故アボカドごときにあんなに喜ぶのか。
僕はアボカドが大嫌いなのだ。この世のアボカドなど全て消滅すれば良いと思う。
いくら性格の悪いやつでも、アボカドが嫌いならば知人くらいになってやろうと思うくらい嫌いなのである。
どうしてあの少女はアボカドが好きなのか、いや、むしろアボカドを食べ過ぎてあの性格になったのだろうか。
それならば今すぐあの少女に忠告してアボカドを食べるのをやめさせ、医学界にアボカドの副作用について報告しなければ・・・
と、自分でも阿呆な事を思いながら歩いていた。
そのとき、
目の前にバナナの皮が落ちているのを、僕は目撃してしまった。
「……。」
何という古典的引っ掛け。
この皮を置いた人は誰かが引っ掛かることを期待して置いたのだろうか、それとも単に落としただけなのだろうか。
だが、今更誰かが引っ掛かると云うのだろう。
しかし。
「ドドドドド」
誰か複数人が走る音が聞こえた。こっちに向かってくるらしい。
だんだん音は大きくなってくる。
「はぅぅ、私が踏むのですよぉぉぉ!」
「にょー!駄目なのだ。我輩が!」
どうやらエイリアンと水林みたいだ。
バナナの皮をどちらが踏むか競争しているらしい。
嗚呼。
馬鹿だ。馬鹿が二人走っている。
二人は猛スピードで走って来る。
「あっ!王子さ……峰先輩なのです!負けませんですぅ!」
「にょー!我輩が……我輩が踏むのだにょ!」
わずかな僅差。
エイリアンが踏んですべった。
バナナの皮は、華麗に空中を舞った。
水林は、
何故かそのまま猛ダッシュで僕にしがみついたので、
さっき工藤からプレゼントされたハリセンで思い切りたたいた。
おお、一生役に立たないと思っていたハリセンが直後に役に立ったよ工藤さん!
有難うとは言い難いけど感謝だけはしておくよ!
「はぅぅ……痛いのです、王…峰先輩……」
水林が涙目でこちらを見た。
「二人とも何してたんですか。」
「「ボケ選手権決勝戦」」
「は。」
聞いてみると、工藤から水林とエイリアンがボケだと言っていたことを小耳に挟んだらしく、どちらが大ボケか対決していたらしい。
何だ。二人とも自覚あるのか。
「はぅぅ……。負けたのです……でも、峰先輩に会えたのでいいのです!!」
「僕はついさっき君に会った気がするんだけど。」
「愛の力がそうさせるのです。」
「何かその台詞に既視感があるんだけど」
又は既聴感?
エイリアンの方を向く、
「あれ?バナナの皮は?」
「ポケットに入れたのだ!柏原にあげに行くのだにょ!!」
タッタッタッ。
「「「?」」」
タッタッタッタッタッ
「誰がそんな物もらって喜ぶ奴がいるんですかぁ!」
工藤だった。
工藤はそのまま、さっきの『ピコピコハンマー2008』でエイリアンを直撃した。
つっこみのれべるがさっきよりあがったんじゃないですかくどうさん。
「にょーー!!い……痛いのだ……」
「はぅぅ……大丈夫ですか、柊先輩……」
「にょーにょーみみょー」
「日本語で喋りなさい!」
僕は・・・何か、もう疲れたので、喧噪の中からこっそりと抜け去った。