1影賀薄14年の人生


その日、僕には確かにいやな予感があったんだ。
僕の存在を無にかえそうとする工藤姉妹『姉』の卒業式だというのに。



〜く・ど・う・は・つ・ね・ そつぎょうしき〜前編



「おはよー、薄。今日もわが子ながら影が薄いね。」
「おはようございます。お母さん。」


影賀家にいるぼくは学んだ。何事にも動じないこの精神を。
思い返してみれば悲運としかいえない僕の人生。


まず5才のとき父さんが「薄、人生とは、耐えることだ」といって消えた。
7才のとき周が道を間違えた(何のとは言わない)
そして11才のとき兄がなぜか中1で生徒会長になった。
そして12才のとき、つまりは僕が小6.
兄が学園生徒代表、ハツが副代表になった。
小6の始業式の日、中学校の代表として体育館の上に立つ二人の見なれた顔を見て僕は誇らしい気がした。


「あいさつの前に「「薄、お茶っ」」。」
気だけだった。
しかもパッシーの宿命なのか僕は無意識に走ってお茶をとどけていた。


「フフ……、薄。こんな熱いの飲めると思っているのかな?」
つぎなおした。自主的に。


始業式の後、教室に帰ると周がいて
「なっっっっさけない。なに?君の名前は『お茶』ですか?」
と言ってきた。僕のあだ名は『お茶』になった。(あっ、熱いほうのね。)


その年の春、兄が卒業した。
在校生代表はハツだった。
大泣きしながら
「あなたは、最高の先輩でした。
先輩のいない学園生活なんて・・・・・・」
と、あんた誰といいたくなるような純情ゼリフをはいた。
先生方も大泣きしていたが1つ問題がある。
「身内は見ていて恥ずかしいんだよっ。」


そのあと、小学校代表からお祝いの言葉だったのだけれど代表は僕でした。
マイクしゃべっているときなーんかボリッボリッという音がしていたんだ。
気のせいだと思った。気のせいであってほしかった。


目の前で兄とハツが隣同士で(なんで学年が違うのに隣かは気にしてはいけない。なんせ奴らは覇王と魔女だ)
しんみりした空気の中、ポテチを食べていた。
人を、人の努力を、人の感動をなんだと思っているんだよ。


そしてその春、兄は魔術を極める?旅に出た。
それからずっと帰っていない。


そう、僕の敵は1人減ったのだ。とても喜ばしい。


13才、入学式。僕は生徒会副会長兼パシられ隊長に任命された。
翌年になっても僕はひたすらパシられた。


そして今日!ついに僕の目の前から魔女が消えるっ。
なんて幸せなんだっ。
神様、ありがとう。僕は今日、生まれた喜びを知ることができた気がするよ。


これが僕『影賀 薄』14年の人生である。
みなさん、僕の今日の感動がおわかりいただけましたか?


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