タバコと煙草とtabakoとたばこ


「あぁオレはお前のことを世界で一番愛してるー!!お前がいればオレは何もいらない!
オレの世界はお前とオレとで構成されているー!!
ってこれどこかできいたことがあるようなないような気がするけど気にしない!!
世界の中心で愛を叫ぶぅぅう!!」



「……ふーん。」
後ろから撫子の氷点下の視線がずぶずぶささり、オレは初給料で買った煙草(BOX)を抱きしめながら固まった。
「長い独白は終わったかい?」
頬づえをつき、無表情な声がコンクリートの部屋にひびく。
オレはその声をききながし、ラベルを神の視点で見つめる。


「……給料を全部使って満足かい。」
「このニコチン中毒者。」
「煙草に愛を語る?」
「正直気持ち悪いよ、貴方。」

つらねられる言葉。


オレは撫子に向き合った。
「煙草のよさをしらねぇのに。」
ギロリとにらむ。

「魔術師風情が煙草を語るんじゃねぇーーーー!!」


ガッツゥゥン!!と音を派手にたて額を撫子にうちつける。
くらくらする前頭葉をおさえながら、尻もちついた撫子を見下ろす。


「……風情、だって?」
低い声がひびく。
その瞬間、腹にこぶしが入った。

「ゲホッ!?」
「……黒魔術のことしらないのに、…いい度胸だね。」
ヒュン、といって、撫子が回し蹴りを顔面にしてくる。
…のを、間一髪でよける。
オレの眼鏡がおち、床を滑る。
「・・・・おもしれェ、闘るのか?」
少々ぼやけているが、そこまで目が悪いわけじゃない。
「やりますか?紅葉おばさん。」
軽く舌打ちして、また蹴りを横にとんでよける。

「おばさんっつーな。お姉さん的な年だろ。」
「はっ?どこが?何処らへんが?」
「身軽な所とか、な。」
撫子のふところをつかみ、かべに叩きつける。
「…っ!」
「おばさんに手をあげるなんて、それこそいい度胸だな…撫子ちゃん?」
その瞬間、撫子がオレを突き飛ばし、床に体を叩きつけられた。

「うぐっ……」
「ねぇ、紅葉。」
上から撫子がオレに向かって腕を押しつけている。


「何もいらないって、ボクもかい?」
「…は。」
「…ボクとの契約、忘れてないよね。」
思いの他、よわよわしい声におどろき、…溜息をついた。


「…忘れてねーよ、だからさ、

そんな泣きそうな顔すんな。」



やっぱ憎まれ口たたいていても、こいつまだ中2なんだなぁ、と苦笑した。







「……なーんて、感動系でおわるとでも思ったかい」
上の撫子はニタリ、と笑った。
そして器用にオレの腕をおさえながら、指をパチンとならした。
「クラゲさん、バイオレッタ、おいで。」
「……おいおいおいちょっと待て。」
オレはジンギスカンにされる前の羊のようにガタガタブルブルと冷汗があふれるのを感じた。


「さぁ、クラゲさん!バイオレッタ!!たばこを一本ずつ水につけるんだ!!

「うわぁぁあー!!ごめんなさい!!黒魔術師様ァァア!!」




『いーっぽん、にーほん、さーんぼーん』





気絶。


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