5僕と連想と苺大福(イアン)




「おっ。……終わった。」
終わった。終わったよ。
今、心に第九かかってる。あぁ、終わった。幸せ。幸福。

あぁ、福といえば大福食べたいなぁ。
大福といってもあれだよ、苺大福っ!!
定価、ただの大福20円増しの至福。
あの白と鮮やかすぎる赤色……素晴らしいよね。

愛……愛といえば『愛のあいさつ』だよね。
僕、あの曲聞くたびにバイオリンしたいと思うんだよ。
ピアノじゃ表現できないしね。

あぁ、苺大福。マイ・レディを食べつつ、愛のあいさつを聞いてそしてうつろうつろ寝る。
なんて幸せだろう。叶うことのない夢だけど。

いや、そうか僕は今ミシンから解き放たれた身。
日本国憲法にだって保障されてる“自由”の権利を取り戻した身じゃないか。

ふっ、ふふ、ふふふ。
まっててねマイ・レディ。
今、僕は君を迎えにスーパーへ走るから。
そして二人で暮らそう。
もう、誰も邪魔しないから。

あぁ、なんという幸福。






「光矢、イアンが寝ながらニタニタしてて気持ちが悪いのですが。」
「そぉ、師匠?可愛いじゃないか。」
「それは、あなたの目が人以下の昨日しかないからでしょう。まだ、師匠ひきづってたのですか?」
「あっ、本当だね。ふとした時でちゃうんだよ。」
「そうですか。それより早くイアンを起こしましょう。あと二時間もすれば“シンデレラ”ですよ?」


劇リハーサルの時間にもなったのにイアンが体育館に来ないものですから教室に来てみましたが……。
そこには、何十枚ものドレスやら衣装やらの山と幸せそうに(そして頭悪そうに)笑っているイアンが。
起こしてさしあげたい気はあるのですが、あのニヤケ顔が三歩以内に近づきたくないほど気持ち悪いのです。


「ねっ、師匠見て!見て!」
黒天が何か持ち上げました。
白と透明の中間のような衣を球のようにぬった中に、更に小さい深紅の衣が。

これは……まさか……まさか……いえ、それ以外には見えません。

「「苺大福(風のうなギーのドレスっ)!!」」


「はっ?」
「だって、考えてみてよ。赤と白だよ。これは錦鯉であるうなギーの為としか思えないよっ!!」
「いえっ、ですけれど。それどこから見ても苺大福として完成しているでしょう。
 ドレスってしってます?頭と足が通るための穴が2ついるのでしてよ?
 それに穴がありまして?」
「そりゃ、薄のうっかりミスだね。」


そういて黒天はどこからかハサミを出し苺大福を切り始めました。
はたして、どちらが正解なのかは知りませんが、
イアン………
あなた、そんなに苺大福に心を奪われていたのですか?
なんでしょう。
なにも言いたくないような気持ちです。




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